業務手順はその昔、口伝で先輩から教えられることが多かったのですが、最近の業務標準化の流れに沿って文書化され、より客観的に職員に伝えられるようになってきました。
標準化・文書化は良い面もありますが、煩雑化することもある為、しっかりと監視・管理をしないと現実と乖離するといった問題があります。みなさんは「手順違反なんてめったに起こらないだろう」と思っているかもしれませんが、実は社会では往々にして起こっています。
例えば、みなさんは自動車工場などにおける検査不正問題というニュースを聞いたことがありませんか?決められた検品などの手順に従わずに出荷したため、あとで何万台という自動車が十分な性能を担保されないという問題です。もちろん故意に逸脱したのであれば大変な問題ですが、多くは「面倒くさい」など何らかの理由により徐々に手順書からの逸脱が生じ、何年かしたのちにはそれが「本当の業務手順」と勘違いされるようになったと私は考えています。
では、このようなことが生じないためにはどうすればいいでしょうか。
(1) 業務手順を理解する
なぜこの業務が必要なのか、この業務を逸脱すればどうなるかを理解すべきです。「薬品の間違いが起こります」といった表面的な事象だけでなく、どのような手順の逸脱や間違いが起こりうるのか?あるいはどのような状況で起こりやすいのか?もう少し深い意味での理解が必要であると思います。
(2) 不要な業務手順は削除する
トリプルチェックにする。あるいはダブルチェックを2回するなど、往々にして数を増やせば間違いが減るといった考え方があります。しかし残念ながら、逸脱の確率は対数関数的なもので、絶対にゼロにはなりません。人間心理として同じようなチェック項目をたくさん羅列されていたり、チェックする人数が多いと逆に一回の精度が落ちます。
(3)現実とすり合わせる
忙しい現場でプロセスを煩雑にするとどうしても手順が飛ばされたり、各部署で勝手に作られる「ローカルルール」が跋扈しがちです。ダブルチェックを行うといってもなかなか他の人を呼びづらかったりした経験などありませんか?
このように現実的に不可能な理想の手順を作るより、何が問題であり、どのようにすれば現実的な手順でエラーを減らせるのか。常に見直すのもいい考えだと思います。
以上、3回にわたって「ヒューマンエラー」についてお話ししてきました。ヒューマンエラーを防止する対策を個人だけでなく、組織でも取り入れて、リスクを最小限に減らすことを考えることが大切です。