みなさんは「ドラッグ・ラグ」という言葉を耳にしたことがありませんか?
欧米ではすでに使われているにもかかわらず日本ではまだ使用できない薬がたくさんある。それがドラッグ・ラグです。
つまり、日本で使用できるタイミングが遅れているという意味です。欧米で開発承認された薬を日本の健康保険で使用するには、日本での承認が必要です。
では、どれくらいの新薬が日本で未承認なのか。一説によると2020年時点で欧米新薬の70%以上が日本で認められていません[※1]。
その中にはがん治療など、一刻を争う薬もあります。なのに使えないというのは非常に残念なことです。
どうしてそのようなことが起こるのでしょう?
以前よく言われていたのは、審査期間の遅さです。欧米では数ヵ月で済む審査が日本では、数年かかることも稀ではありませんでした。薬の審査を行う「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)」では、その点について認識しており、随分と審査は早くなってきているようです。
ドラッグ・ラグは申請ラグと審査ラグに分けられます。PMDAではドラッグ・ラグについて毎年統計を出しています[※2]。それによると平成20年前後では3年程度あったドラッグ・ラグが、近年は1年以内になり、平成29年に至っては半年以内に収まっています。つまり申請さえなされれば上市までは随分と早くなってきたのです。
PMDAの話だけであれば、国内未承認薬は年々減少していき、最終的にはタイムリーに新薬を使えるようになるはずです。しかし、実情は徐々に減少していた未承認薬の割合が、2016年を境に年々悪化しています。2016年には56%にまで減少した未承認薬でしたが、2020年には72%まで増加しました。ドラッグ・ラグ自体は、PMDAの審査体制という国内の問題だけでなく、研究環境や経済情勢などグローバルな変化が深くかかわっているからです。
これについては、次回以降にまた詳しくお話ししたいと思います。