現在、運送業界ではトラックドライバーの人手不足から、宅配業務が今後滞ることが予想されています。また2025年の大阪万博でも人手不足や資材高騰などから建設費が高止まりし、当初予定されていた金額から大きく乖離することが指摘されています。
人手不足には給与を上げればよいという話をする人がいますが、話はそう簡単ではありません。実は保育、介護、教育・医療、建設、農林水産業などエッセンシャルワーカーと言われる職種ほど給与が上がらないという説があります。
政府介入が著しい職種ほど労働生産性が低く抑えられるため、給与増額は困難と思っています。この話は次号で行いたいと思います。
さて、先日発表された米国雇用統計では、平均時給が33ドル(約4290円)と報告されました。もともと好調であった米国経済にコロナの人手不足が加わりさらに上昇したと思われます。まずは日本とアメリカの時給格差は目を見張るばかりです。日本もアメリカを見習って時給向上に取り組むべきですが、果たして日本が時給4000円になったらどうなるでしょうか。
もし賃金が4倍になった場合、物価も4倍近くになると思います。これが「賃金インフレ」と呼ばれるもので、賃金の上昇が物価の上昇を促し、それがまた賃金の上昇を招くという経済の好循環を示す証左であると言われています。
以前に日本では、ここ30年給与が上がっていないというお話をしました。増税や社会保障費の増額から、むしろ可処分所得は下がる傾向にあります。仮に急激に賃金を上げようとした場合、現状の法体系では給与の増額は一部の業種に限られ、物価インフレが先行する当面は苦しい局面が続くと予想されます。特に医療業界では物価に見合った診療報酬の増額が行われるとは考えにくく、非常に難しい経営が求められるでしょう。