先日、政府から少子化対策のたたき台が示されました。非常にざっくりと解説すると、原因として「自立不足」「将来の不安」「社会と家族のきずなの欠如」を挙げ、その少子化の流れを変えるための対策として「自立の促進」「働き方改革」「生命や家庭の役割教育・社会との連帯」を進めるとしています。少子化は世界各国でも問題となっています。最近の報道で韓国の2022年特殊出生率が0.78(日本では1.30前後)という事実が伝えられ、半端ない衝撃を与えました。日本でも出生数の下振れが続いており、予想より早いテンポで少子化が進むことは明白です。上述の「新しい」対策が物語るとおり、目新しいものはなく、万策尽きた感があります。
また、先日行われた日経新聞世論調査でも内閣の少子化対策に「期待する」は41%で、「期待しない」の53%を下回りました。
対策のほとんどは医療無償化や補助など医療業界には歓迎すべきものですが、お産の保険適用というのが気になりました。出産は原則として保険適用外であり、出産一時金として保険組合から支給されます。保険適用になることで、自己負担分が増えるじゃないかという意見はありますが、実際はこれを補うようです。つまりは保険であろうとなかろうと補助金の出どころが異なるだけで、利用者負担はほとんど変わらないと思われます。
この政策の目的は別のところにあるとされ、お産費用の標準化と施設の地域均衡です。少子化対策も追い風となって一時金制度が1994年に始まったときは30万円だったのが、2023年4月から50万円と、この30年で67%増額されました。一般の診療報酬と比べて破格の値上げで、一時金増加のたびに出産費用もスライド値上げされている為、これに歯止めをかけるのが一つ。
またお産費用は東京など大都市ほど高く都道府県別では、最高が東京の55万円で、最低が佐賀県の35万円とこれまた1.5倍以上の開きがあります。保険適用により値段が均一化されれば地方では値上がりし、都会では値下がりとなりますので、施設偏在の是正も目指すところかもしれません。
本来は東京のように人件費も地代も高いところでは、料金が高く設定されるべきでしょう。保険診療はこれに逆行する形で値段を標準化することがよいことなのか。今のところわかりませんが、産科診療を大きく変える分岐点になることは間違いないと思います。