春風の心地よい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
花冷えの時期柄、どうぞご自愛くださいませ。
さて、日本の医療現場では、デジタル技術の活用による業務効率化とサービス向上を目的として、「医療DX推進体制整備加算(以下、DX加算)」が導入されています。この制度は、医療機関がデジタル技術を活用する体制を整備することで、診療報酬に加算が適用されるものです。
少子化による労働力低下や逼迫する財政状況から、日本の医療には急速な効率化が求められており、そういった点では方向性として間違っていないと思われます。ただ、周囲の状況を見る限りでは、この施策は極めて不評のようです。
今回から数回にわたって、日本医療のデジタル化について解説していこうと思います。
DX加算は、オンライン請求の実施、オンライン資格確認、電子処方箋の発行体制の整備、電子カルテ情報共有サービスの活用体制、マイナンバーカードの健康保険証利用(マイナ保険証)の一定以上の利用実績、医療DX推進に関する情報の院内掲示およびウェブサイトでの公表など、施設基準を満たす医療機関が対象となります。
特に、マイナ保険証の利用率に応じて加算点数が変動し、利用率が高いほど高い点数が適用されるのが特徴です。2025年4月からは、さらに高い点数がつけられるように改定されました。
DXの導入により、手作業が削減され業務負担が軽減されるだけでなく、受付手続きや待ち時間の短縮によって患者の利便性も向上します。また、情報共有サービスの活用により診療情報の正確性が高まり、医療の質が向上するというのが謳い文句です。
一方で、システムの導入や維持は零細医療機関にとっては大きな負担であるうえに、デジタル技術に精通した人材が不足しており、システムの運用やトラブル対応が課題となっています。また根本的な問題として患者のマイナ保険証の利用率が低い場合、加算要件を満たすことが難しい状況です。
中でも電子処方箋の導入が20%程度と全く進んでおらず、適用要件を満たすことが困難な医療機関が多いのが現状です。
この現状を打破するには、政府や自治体による補助金や助成金によって導入コストの軽減を図ると同時に、デジタル技術に対応できる人材の確保を促進しなければなりません。また、マイナ保険証の利便性やメリットを積極的に周知し、患者の利用率向上を図ることも不可欠です。
さらに、既存システムとの連携を容易にするために標準化や互換性の向上を図り、導入のハードルを下げていく必要があります。
このように、解決の方向性は理解できるものの、現実的かつ具体的に進めるのが困難な状況です。とはいえ、これらの施策を通じてDX加算の適用を広げ、デジタル化を促進することは今後の医療にとって必要不可欠と思われます。
次回はどこをどのようにすればよいのか、あるいは現実的な見通しについて解説していきたいと思います。