白内障の手術(水晶体再建術)を両眼に行う場合、1週間程度間隔をおいて片眼ずつ行うのが一般的です。多くの手術施設では、眼帯やガーゼをして術眼が見えない状態にして帰すことも多いので、帰宅後の不便を考えると片眼が見える状態のほうが安全であるように思います。日帰り手術の場合、帰宅後の患者さんの様子が医療側から見えないため、慎重を期す意味では当然でしょう。
しかし2013年にアメリカ眼科学会雑誌(Ophthalmology)に興味深い研究結果が発表されています。両眼手術を行う場合、同日手術(3561眼)と別日手術(13711眼)を行った患者さんの手術成績を比較しました。どちらも視力、屈折度数に差がなく、術後成績としては両群ともに良好でした。また最も重篤な合併症である化膿性眼内炎ですが、同日群で10,000眼あたり1眼、別日群で10,000眼あたり0.5眼で、全く同等でした。また、両眼同時手術を行っても、両眼ともに感染を起こした症例はありませんでした。このようにどちらのスタイルで手術を行っても、手術の結果に差はなく、同じであると考えられます。
本研究が後ろ向き研究であること、国や地域による差があるなど議論はつきませんが、おおよそ医学的には真理であると思います。地方や遠方に居住などたびたび来院が困難な場合、リスクを十分に説明したうえで、両眼同時手術を行ってもよいと思います。
もちろん、恭青会では、単に手術を行うだけでなく、帰る際の目のチェック、家族に対する帰宅後のケア、緊急電話連絡システムなど、万全の備えをした上で行っています。
手術をしない目が不自由な患者さんには、今でも術後眼帯を外し保護メガネに変えて見える状態にして帰っていただいています。それだけの手術のレベルがあればこそできるものですが、こういったイレギュラーな条件に対してもできるだけ快適に、不安なく手術を受けて帰っていただけるよう恭青会では日々努力しています。